あなたは夢を見ますか。昨晩はどんな夢をみ見ましたか。楽しい夢でしたか、それとも、怖い夢でしたか。夢は人間の不思議であると同時に、人間を知るための一つ手がかりでもあります。夢とは一体何なのでしょうか。また、夢の中で私たちは何をしているのでしょうか。今月はこの不思議な夢について考えたいとおもいます。
眠りと夢 * Sleep and Dreams
世の中には、自分は毎晩夢を見ると言う人もいれば、二、三カ月に一度と言う人もいます。人によっては、ぜんぜん夢を見ないと言う人もいます。しかし、実際にはみんな毎晩夢を見ているのです。ただ、夢を見たことを覚えている人と覚えていない人がいるのです。私たちの睡眠には、眼球の動きが活発になるレム睡眠と、そうならないノンレム睡眠の二つがあります。レムというのは、“急速に眼球が動く”という意味の英語の頭文字をとったものです。レム睡眠のとき、体はぐっすり眠っているのに脳は目覚めています。眼球が動くのもその一つの表れです。夢を見るのはこのレム睡眠のときです。一晩の眠りの様子を表すと図1のようになります。横になって眠りにはいると、眠りはどんどん深くなります。30分ぐらいで眠りはもっとも深くなり、それが30分ぐらい続いた後に、今度は急に眠りが浅くなります。そしてもっとも眠りの浅くなった状態が、レム睡眠です。このとき、急に眼球が動きだすのが、まぶたの上からもよくわかります。最初のレム睡眠が起こるのは眠ってから1時間半ぐらいのときで、これは5分ぐらいで終わり、また眠りは深くなります。これを一晩に三~四回繰り返します。一晩に7時間眠るとして、レム睡眠の時間2時間ぐらいになります。つまり、私たちはだれでも一晩に2時間ぐらい夢を見ていることになります。このレム睡眠のときに起こして聞くと、夢を見ないと言っていた人でも、今夢を見ていたと答えるでしょう。
夢の中で何を“見る”のか?What Do We “See” in Dreams?
普通私たちは“夢を見る”と言います。しかし、夢の中で音を聞いたり、何かに触った感じがしたりすることもあります。私たちは目が覚めているときに、いろんなものを見たり、聞いたり、触ったり、味わったり、においをかいだりします。夢の中にはそのような起きているときに感じた感覚が出てくるのです。だから、感じたことのないものは出てきません。普通の人は自分のまわりのことを、主として視覚を使って認識し、判断しています。見る夢が多いのはそのためです。
夢の役割 * The Role of Dreams
私たちは夢の中で一体何をしているのでしょか。私たちは、起きている間にいろいろなものをみたりして大量の情報を脳の中に取り込んでいます。だから、どうしても取り込んだものの中から、不要な情報を捨てて、大切な情報だけを残して整理しなければなりません。情報の整理には昼間の忙しいときより静かになってからのほうがいいので、私たちは、動物も含めて、このような整理を睡眠、特にレム睡眠のときにやっているのです。
視線と夢と脳 * Glances, Dreams and the Brain
先生から質問されると上を向く学生がよくいます。これは、別に先生の顔を見たくないのではなくて、考えるのを邪魔されないように、目からの刺激を避けようとしているのです。ただ、実際の動きをよく観察してみると、上向きというより、右上とか、左上に動かしています。そして面白いことに、目を動かす方向が人によって決まっているのです。
これはその人の脳の使い方と関係があります。目を左に動かす人は右脳が優位脳で、逆に右に動かす人は左脳が優位脳です。さらにおもしろいことは、この目の動きと夢の想起との関係を調べてみると、目を右に動かす人は右に動かす人に比べて2倍も夢の想起が多いというのです。夢は右脳で見るといわれていますから話がよく合います。右脳は具体的で、顔や物などの形を認識することに優れています。これに対して、左脳は抽象的で、話すことや言葉を理解することに優れています。夢は具体的ですから、右脳で見るというわけです。
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